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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)450号 判決 1948年8月05日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人上告趣意書第三點について。

しかし、所論朝鮮向け進駐軍用船舶が絶對に存在しないものであることはこれを認むべき證據なく、却って、原判決擧示の證據によれば、かかる船舶が存在し、被告人等もこれが來航を豫期して本件犯行を爲し、なおも翌日再び遂行すべく待機していたもので、偶々當日は該船舶が判示三崎沖に來航しなかったに過ぎないことを認め得るから、本件密輸出遂行行爲不成功の原由は單に相對的のものたるに止り、その行爲の性質上結果発生の危險を絶對不能ならしむるものとは言えない。論旨はその理由がない。

同第四點について。

しかし、關税法所定の輸出行爲は、海上にあっては、目的の物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載するによって完成するものである。そして同法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項にいわゆる「輸出しようとした者」とは、未だ前記積載行爲の実行には達せざるも、輸出のための單なる準備行爲の範圍を超えて、前記積載行爲に接着近接せる手段行爲の遂行に入った者を指すものと解するのが相當である。されば、本件のごとく密輸出の目的を以て神奈川縣三崎沖において、朝鮮向け船舶に積載すべく、発動機船に物品を積込み横浜市より出港し目的地點に到達した以上、未だ本船の積載に着手せざるも、前記輸出しようとした者に該當することは言うまでもないから、本論旨もその理由がない。

同第五點について。

しかし假に第一審の手續に所論のやうな違法があったとしても第二審の原判決に影響を及ぼさないことは明白である。また、原審においては所論上告人申請の證人を許容しこれが喚問を爲すべき證據決定を爲したが所論のごとく召喚状不送達となったものであるから、證據決定の施行はここにおいて終了したものといわざるを得ない。從って原審は上告人の證人喚問權を不當に制限又は拒否したものとは言えないから原判決には所論の違法は存しない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑訴法第四四六條により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎)

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